学習の作法「英語の長文読解力がアップする“読み込み”」
英語の長文が苦手だという生徒は多いと思います。英語の長文は、ちょっとしたコツだけでできるようになるものではありません。英文に慣れるまでしっかり読み込むことが大切です。
今回は、学習の作法「できることをさらに繰り返す」の中の、“読み込みを繰り返す”勉強法について説明します。このやり方に沿って取り組めば、英語が苦手な人でも長文ができるようになります。
英語の中でも長文は、高校入試問題でも配点が高く差が付きやすい部分です。読み込みの練習をどれだけしてきたかが合否を分けます。
逆に言うと、この勉強法に沿って読み込みの練習をすれば、高校入試で差をつけることができるということです。
読み込みを繰り返す“長文読解勉強法”のポイント
読み込みを繰り返す勉強法を紹介する前に、まずは押さえておきたいポイントを説明しておきます。
①短文1文ずつが理解できているか
英語の長文を理解するには、まずそれを構成する短文1文ずつを理解できなければなりません。長文をすらすら読むためには、短文をすらすら読めている必要があります。これは、学習の作法で紹介している“例文暗記”です。
例文暗記の方法については以下の記事で確認できます。例文暗記ができていない人は、まずこれをマスターしてから今回の長文対策にチャレンジしてください。
高校入試レベルでいえば、この記事で紹介している『99パターン』を覚えていればOKです。『99パターン』の例文をすべて暗唱できる人はすでに英語のリズムをつかめているはずです。
②英語がわからないのか文章の内容がわからないのかチェック
次のポイントは、英語がわからないのか、文章の内容そのものが理解できないのか?をチェックするということです。
高校入試レベルまでなら、英語長文に登場する話題やことばもやさしいものが多いのですが、場合によっては、中身そのものがうまく理解できないこともあるのです。
たとえば、日本では4月から新学期が始まりますが、アメリカでは8月下旬から9月初めが新学期になります。
こういった日本の習慣や常識と違う文章に出会ったとき、内容がうまく理解できないことがあります。
ただ、これは次のポイント「長文をたくさん読むこと」で解決できます。
③とにかく長文をたくさん読む
次のポイントは、とにかくたくさん長文を読みこなすことです。よく、長文を読むコツで「接続詞に気をつけよう」などといったものがありますが、これは長文に慣れていなければうまく使うことができません。結局は、そうしたコツを身につけるにも、たくさんの文章を読むことが不可欠です。
長文をたくさん読むことにより、まず、読むスピードが速くなります。したがって、時間内に読み込める量がさらに増えます。
そしてそれにより、②であげたような「中身そのものが理解できない」ということはかなり減ります。
英語長文によく出てくる話題や、時事問題などに慣れてくるからです。入試本番対策として「初めて見る文章を読む練習」にもなります。
また、読み込むためには英単語熟語を覚えておくことが必要ですが、長文をたくさん読み込むことは、文章の前後関係から英単語熟語を覚えていくことにもつながります。
英語の長文読解力がアップする!読み込みの方法
では、これから、読み込みの具体的な学習法をご紹介しましょう。
①日本語訳を読む→丁寧に英語長文を読む
まず、日本語訳をざっと読みます。そして、ひと通り理解できることが確認できたら、いよいよ長文を読んでいきます。
最初の1回はできるだけていねいに読みます。
このとき、例文暗記でやるように、日本語訳と照らし合わせ、「なぜその訳になっているのか」を理解します。教材に直訳がついているとかなりスムーズに進みます。
短い例文を一つ見てみましょう。
I am going to visit Kyoto next year.
「私は来年京都を訪れるつもりです。」
この場合、
I(私は) am going to(~するつもりだ) visit(~を訪れる) Kyoto(京都) next year(来年).
という感じで、英語と日本語訳を一つ一つ照らし合わせます。
高校入試レベルなら、それだけでほとんどの文章は理解できます。
高校入試用テキストとしておすすめするのが『実戦!英語長文はこう読む!!』(富士教育)です。このテキストは、読み込みの学習に必要な3つの要素を満たしています。
その要素とは、次の3つです。
1.十分な量の英文が収録されている
2.日本語訳のページでは直訳(区切り訳)と通常訳(通し訳)の両方が見られる
3.英文ページには語句や構造が簡潔にわかりやすく解説されている
②文章が理解できたら、“読み込み”をする
文章を理解できたら、いよいよ「読み込み」に入ります。「理解できたところで終わり」ではありません。むしろここからが本番です。野球の素振りやピアノの練習のように、できる状態でさらに繰り返すことに意味があるのです。
いきなり速く読もうとする必要はありません。ゆっくりでもいいので、意味的な区切りをなめらかに音読するということが重要です。
短い英文の場合を見てみましょう。
I went to Tokyo to see my friend.
「私は友達に会うために東京に行きました。」
この文章の場合、
I went to Tokyo / to see my friend.
区切りは赤色のスラッシュの部分です。
つまり、「I went to Tokyo」までをなめらかに読み、続けて「to see my friend」をなめらかに読むような感じです。
教材の中には、最初から文章に区切りのスラッシュが入っているものがあります。その中でもおすすめなのが、『実戦!英語長文はこう読む!!』です。
この教材を使って長文を読む練習をし、スラッシュの中でつっかえるところがなくなる、というのがまず初めの目標です。
スラッシュの中で止まるようなことを繰り返すなら、その部分に印をつけておきましょう。そこを繰り返し読み、意味を思い出すことで、弱点が消え、より英語に強くなっていきます。
この段階では、速く読もうとするあまり、ぶつ切りの音読になってしまう生徒が出てきますが、私は、「あわてる必要はない。ゆっくりでもなめらかに読むべき」と根気よく指導することを心がけています。
ゆっくりでもなめらかに繰り返せばできるようになる。これもピアノの練習と同じです。同じ曲を繰り返し練習しているうちに速く弾けるようになります。英語の音読も、読める文を繰り返し読むことで上達するのです。
*文章に知らない単語が出てきた場合
文章に知らない単語や熟語がたくさんある場合、読んでいても「この単語の意味は何だっけ?」と、立ち止まってしまうことが多くなります。そういう文章では先に「語句」を覚えてしまうほうが良いでしょう。
このときのやり方は、「発音して意味を即答する」ことです。先に単語の発音と意味を結びつけておくことで、文章を音読していくときにも素早く思い出すことができます。
単にその文章が読めるだけではなく、出てきた単熟語を覚えるというのも「読み込み」の重要な役割なのです。
③すらすら読めるようになってから最低3回は繰り返す
スラッシュ内をなめらかに読む練習や、単語の暗記ができたらすらすら読めるようになっているはずです。個人差はありますが、ここまでに5回くらいは読んでいることになるでしょう。
しかし、ここで終わりにしては、読み込みの効果が十分に出ません。すらすら読めるようになったら、そのまま最低3回は繰り返し読むことがポイントです。
できれば10回、20回と繰り返しましょう。そうすることによって、野球のバッティングフォームやピアノの指使いをからだで覚えるのと同じように、感覚的に理解できる英語が増えていくのです。
意味の区切りごとについているスラッシュは、感覚的に英語を理解するのにとても役立ちます。区切りごとに意味を覚えているので、日本語訳もその語順で覚えることになります。つまり、英語の語順のまま理解することができるのです。
ここで、一つ例文を見てみましょう。
She is the most beautiful of the four.
「彼女は4人の中で最も美しい。」
この場合、
She is the most beautiful / of the four.
区切りは赤色のスラッシュの部分です。
区切りごとに意味を把握すると、
「彼女は最も美しい」「4人の中で」
となります。
これが、英語の語順のまま日本語訳を覚えるということです。
感覚的に英語が理解できれば、長文を読むスピードがぐんと速くなりますし、リスニングでもかなりのスピードについていけます。また、英語のニュアンスをより深く正確に理解することにもつながります。
まとめ
以上、英語の長文読解力が上がる“読み込み”の勉強法を紹介しました。
長文読解には先ほども書いた通り「接続詞に気を付ける」などのコツがありますが、それよりもやはり“読み込み”が重要です。
英語長文を攻略して入試本番でライバルに差をつけるためにも、早めに対策をしておきましょう。
また、長文読解の前の段階でつまずいている人は、前のステップ“例文暗記”に戻って学習しましょう。
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